藤井聡太四段ー5(終)

試合内容を解説者の佐藤会長と中村6段は上手い指し回しだったと振り返った。解説者らは対局場へ同席、森内氏と藤井氏の感想戦が始まった。5、6手が進んだところだったか、会長が森内氏に「矢倉は作戦でしたか?」と問うと「はい、想定してました」と応える。それを受けて中村6段が藤井氏に「藤井さんは?」と間髪を入れずに訊ねる。「よく訊いてくれた」と思いながら、その答えを待った。俺は藤井氏のその返答に接し、しばらくしてからじんわりと涙が溢れた。「はい、森内先生の矢倉に教わろうと思いました」。何やら嬉しそうな、そんな顔に見えた。こうしたフレーズは新鋭の若手や肩書きが下手の棋士からしばしば聞かれるゆえ耳慣れてはいる。しかし、この人が言うと別物だ。俺が歳を取ったセイもあろう。俺は森内氏と同世代。対する中学生の口からこうした発言が返ってくるとは…。新鮮な気持ちに支配されたというか、清々しさこの上ないではないか。続けて少考してみた。その感動の中枢にあるものは、その藤井氏の素直な瑞々しい感性に触れたからだろう。「教わりたい」。20歳以上が言うと普通に思えちまうが、中学生が言うと状況が違う。「おおー」という喜びの感情が湧き、ただただピュアな驚きに満ちてしまうこの心境は一体何なのだろう。一瞬、自分も中学生時分の鋭敏な感性に戻ったとでもいうのだろうか。それはさて置き、このような引き吊り込まれる現象が眼前で起きたことに、人の出現とはおもしろいもの、と感じずにいられない。
streetwalkers / Parisienne High Heels (1974年のデビュー作。もう何回も紹介しているナンバー。近年CDで発売されたようだ。ベースラインがカッコよく、是非とも針を通してLPでベース音を出したかったが、安価なCDで入手するか…。447) ::: https://www.youtube.com/watch?v=a2o_FZKSz4E