A級順位戦ー7(終)

順位戦とはこのように、順位差ひとつで残留と降級の運命に分かれるドラマ性が特徴であり見所である。「順位戦は、誰が降級するかを見るのが玄人的通な見方である」と言った棋士がいた。これは頷ける。敗戦者の顔を見るのが楽しいわけだ。これは、応援している棋士が絡んでいなければの話しだが、今期は応援している谷川さんが危なかったから全くそういう楽しみはなかった。しかしそうか、A級順位戦は、棋士の迫力ある闘う姿を見るのが魅力だったという以外に、その降級者が誰になるかというのを楽しんでいた記憶が甦る。去年は、衆議院選挙があった。毎週楽しみで聞いている久米宏さんのラジオでも当然この話題は取り上げられた。久米さんがこの選挙について視聴者から寄せられたハガキを読む。「私が国政の選挙中継で一番楽しみなのは、負けを喫した政党や落選した政治家の、あの何とも云えない落胆したときの表情を見れることです」。これは笑った。大いに共感した。〝負け"は本当にキツイ。負け方にも色々な味があり、特に、あとを引く負け方は、立ち直るのに相当の時間が掛かる。政治家も敗北の味はとてもこたえるようだ。テレビの選挙速報で見られる敗北した政治家の表情は、負けた棋士のそれと全く同じ。口では「国民の皆様の審判だから真摯に受け止めている」と前向きなコメントを発するが、"負け"を認め切れてない表情が伺える。「負け」という事実に直面しても胸の内では認め難く、また中々素直な気持ちになれないもの。すぐ立ち直るのはとてもむずかしいのだ。僕は将棋でそれを知っている。政治家も人の子である。明後日、羽生善治vs森内俊之の、第71期名人戦が東京で開幕される。3期連続同一である。今期はどちらに軍配が上がるのか。
ラッシュ/ケミストリー:1982年リリース(7535)http://www.youtube.com/watch?v=0DC2JC61SCc