NHK「あの人に会いたい」−52

時間は過ぎて、とうとう僕が求めいていた人物がやって来た。近藤さんは「あぁ、連ちゃん」と言った。対等関係に限りなく近い様子に驚いた。僕に気付くと「おー、〇〇〇じゃねぇか、久し振り、どうした」と言うので「待っていた」と答えた。心配してくれた店の人が「さっき、この人、トイレ行く途中、ドカンとか音を立てて壁に激突してた。床を見たら髪の毛がたくさん落ちてんの」と驚きの声で報告してくれた。近藤さんが「連ちゃん、知り合いなの?」と言い、有名人を前にした僕はとにかくどうしていいかわからなった。連ちゃんは僕を「昔、ローディをやっていた」と近藤さんに紹介してくれた。こうとなったらしようがないので笑顔で僕は「こんちはあー」と強めの声を出した。すると近藤さんも同じ調子の笑顔と声で「こんちはあ」と応えた。僕は一本取られたような気になった。連ちゃんが久し振りがってくれたのも束の間「こいつ、チンポ小さいんですよ(*気持ちの事)」と暴露してくれた。「んふっ、は、は、は、は、は(笑)」と近藤さんのその時の応対はすこぶる優しかった。多分、僕は知られたくないことを知られたため自意識過剰が出て強張らせた表情を見せてしまったかもしれない。しかし、その笑いで救われたような気になれたのだった。有名人でもこんな僕みたいなレベルの低い人間でも同じように接してくれるんだなぁと思ったことを覚えている。