NHK「あの人に会いたい」−49

話しを戻そう。この時の矢沢さんの年齢はまだ40代に入っていない。キャロルの頃の写真を見るとオッカナイことこの上ないが、この頃の30代後半も同様にオッカナかったのは言わずもがなである。とは言え、僕がいま振り返って思うことがある。オッカナガッてばかりの僕はそもそも現場の皆から外れていた存在だったと思えるのだ。先ず労働(欧米ではこう表現する。世間では仕事と口にしているが、ちょっと僕もこう表現したい)として、セールスの成功を目指すべく意気込みを持ち、スタッフの一員の心構えでことに当たるのが本来の姿だ。矢沢さんにぶら下がり、パワーをもらうだけを考えているのはおかしい。こちら側に、矢沢さんに少しでも力になれるエネルギーを費やす姿勢が伴なわければ、僕は一体そこに何のために居るのか。矢沢さんと対等な関係で渡り合わなければいかん、という程のレベルは流石にキツさが過ぎるが、せめてあの握手時「サムバディーズ・ナイトはとてもかっこいいです。この楽曲のメロディは優しさ、切なさ、激しさといった様々な情感が同居しているのがその原因と思いました。矢沢さんのヴォーカルに乗った歌詞も、やり場のない想いと切なさの入り混じった激しくも複雑な感情を吐露していて、聴いている自分もどうしたらいいか見失ってしまいそうでした。是非多くの人に聴いてもらうべく、アルバムのセールスに繋がるよう宣伝活動に励みます」と言えれば良かった。また、この曲の持つ良さを知れば、歌詞を見て作曲したのか、既に完成していた作曲に歌詞を付けたのかといった疑問を矢沢さん本人に直接ぶつけることだって可能だったはずだ。こんなやり取りなんて最高なんだろうと胸は躍るよな。