NHK「あの人に会いたい」−34

人間の思考システムとして組み込まれているこの失礼に当たる、礼儀に反するという認識が及ぼす作用は、例えばその相手から度が過ぎたうわの空で接せられたら勿論怒りを覚え、しばしば喧嘩にまで進展する性質を有している。これは人間だからこそ見られる現象であろう。動物には起こり得ない。人間と同じく社会性を持つ哺乳類と云った、いかに人間に近い思考を司る動物でも、失礼とか礼儀という観念が備わり日々それを認識して行動を処しているとは相当考えにくい。彼らになぜそのような思考回路が必要なのか?と問いたくもなるほど。「いや、それはあなたの妄想だな。動物をバカにしちゃいけない、人も動物も同じでしょ?」と言う人には、僕は逆に、そう意識する観念を有さざるを得ないとするその理由は何か、と問い返したい。こうして認識する行為、並びにこの現象(ときに喧嘩へ)は、当事者双方に高度な思考が働いた上でなければ成立しない事に見当が付く。