NHK「あの人に会いたい」−26

さて、自分本位の思索と妄想に耽りながら一方通行の夢見心地で綴って来たが最後の締めに、矢沢さんとの握手時に仕損じた、悔いる失敗を記す。それは、手を握られた僕は握り返さなかった、ということである。握手時は先述の通り、差し出された手に対して、僕の小心者的気弱性の躊躇と緊張によって頭の中は真っ白で埋め尽くされながらも何とか反射神経でもって自分の手を近付け合わせた、とまでは報告した。握り返さなかったというのは、この直後を指す。これが出来なかった。達成出来なかった。これを成し遂げられなかったのは大いに甘過ぎた、甘さにも程があるとしか言いようが無いかもしれない。いや、もっと切実に言うならば、人としてお粗末さの何物でもないと酷評されても先ず言葉は返せなさそうだ。