NHK「あの人に会いたい」−20

遂に、矢沢さんの出演時間も終了が訪れた。放送終了後CMに入り、両者とも起立して「お疲れ様でした」とお辞儀しながら挨拶を交わす。少しの談笑を経て、矢沢さんはブースをあとにした。退室が完了するまで相手DJは再度「ありがとうございました」と頭を下げ続けていた。ブースから出て来た矢沢さんと我々の距離はやはり4メートルぐらいか。矢沢さんは身長は高く腰周りもあった。「体大きいなぁ」と目惚れて矢沢さんを見ていると、その視界に歩み寄って来た事務所の方の姿が入って来た。矢沢さんへ何やら話してこちらへ顔を向けて手を差し出し我々の存在を示す。すると矢沢さんもそれに倣ってこちらを向いた。この現象に一瞬何事が起きているのか思考を失いボーッとする。その後「うわぁっー」「ぎょえー」と頭がパニクる。どうしたら良いのかわからない。急なことで想定外の展開である。一つの仕事を終えた矢沢さんはそのまま去って行きそれを見届けるもの、とある種の温泉気分で構えていた僕の了見は見事に意表を突かれた形だ。この時点で既に起立していたはずだが、伊藤さんか誰からか「立て、立て!」と促されたと回想する。やがて矢沢さん一人自らが我々の方へテンポ良くリズミカルに〝ツカッツカッ″という足取りで向かって来る。