NHK「あの人に会いたい」−19

我々は生で話す矢沢さんの姿を目にした分、ラジカセから聞いた人とは、伝わって来るその熱を感じた温度差に、天と地ほどの開きがあると思っている。電波を通じるのではなく、直接その熱を受け止め味わう。近くに居たからこそ、生身の矢沢さんを目撃出来た上、その発せられた熱を我が身が間近で浴びた。この体験を大事に思う。生で話しているその表情とも接すれば、その発するメッセージに説得力が倍増する、と合点が行くことは容易いであろう。矢沢さんの受け答えはやはり一生懸命であり、正直さが前面に出ていて、トーク熱は終わりまで下がらなかった。僕は番組中、一緒に座って成り行きを追っている仲間の顔を見た。やはり真剣な眼差しそして顔つきだった。また在る者は背筋が反り返る程ピーンっと伸ばして聞いていた。その真剣さたるや初見で接し、普段は全く見ることができないその立ち居振る舞いの意外さ目の当たりにして驚いた。皆、矢沢さんが好きだったんだと思う。皆きっと「成りあがり」を読んでいるときもこう集中していたのだろう。「成りあがり」に嘘偽りはなかった。本の矢沢さんと生の矢沢さんは全く同じだった。本にある「ビッグになる」という精神に終わりが訪れることはなく、この番組内で「とにかく続けることが大事だね」と発言した矢沢さんの姿に皆、「『ビッグになる』旅はまだ続いているのだ」と自らその目と耳そして熱を感知した皮膚で確認していたに違いない。今にして僕も漸くその一員に入れた気がする。