NHK「あの人に会いたい」−5

5年後の二十歳のとき、作家・村上龍さんがTBSで日曜夜11時から「Ryu’s Bar」という30分トーク番組をやっており、ゲストに清志郎さんが出たのを見た。村上さんが「二十歳前からストーンズが好きで洋楽ロックを聴いて来て、日本のロック・バンドは聴かなかったが、RCが出て来て〝スローバラード″を聴いたとき、すごく素直に聴けたのね」と言っていた。これは僕が中3のときに覚えた感覚と酷似したものが見出せて、僕もまた村上さんの意見を素直に聞けた。あ、そうか、「スローバラード」の事を村上さんはこうも続けていたはずだ。「等身大のロックで、だからこそ納得させられたっていうか...」と。村上さんは清志郎さんへ色々質問していた中で「海外進出は目指したりしないんですか?」というのがあった。清志郎さんは「無いです。してみようかと思った時期もありましたけどぉ...でも、そんなんじゃないと思います」と答えていた。この受け答えも清志郎さんを好きになった理由の一つ。等身大的発言と云えようか。等身大、と云うのも重みがあるものだな。しかし、もっとたくさん答えて欲しいが口数少ない清志郎さん、何でもっと言ってくれないのかなぁ、どう考えているか知りたいのに、とよく思ったものだ。この録画ビデオは15回ぐらい観た。中でも好きで忘れられない場面がある。清志郎さんが村上さんの方を向いて「たばこぉ、ありますか?」と穏やかな表情で言い、村上さんが自身のたばこ箱を叩き(相手が取り易いように)一本浮き出させ、清志郎さんに差し出す→清志郎さんが微妙に、中々気付きにくい程度に(たしか)頭をコクッと下げたように会釈しその一本を抜く→村上さんがライターに片手を添えて前に差し出し火を付ける→清志郎さんはそのくわえたばこをその火に近付け、吸って煙を出す。非常に素早い煙出しである。なんかお見事である。「あっ(どうも)」と声を出し穏やかな表情のまま再度微妙にコクッとさっきの調子で会釈する→村上さんもたばこをくわえて火を付け吸い煙を出す。この一連のやり取りが実に好きだった。「大人って格好良いなぁ」と惚れ惚れする瞬間だ。何度も観たのはこの場面に拠る所も大きい。同じようにやってみたいと当時思った。しかしこの頃はまだたばこには手を付けていない。始めたのは5年後のこと。今ふと思ったがたばこを始めた理由はこれも影響あるんじゃないか、段々そういう気がして来た。この録画したビデオは5年間ぐらい持っていたが不覚にも何処へ消失してしまった。また観てみたいのだが観れない。そういえば、村上さんが吸っていたたばこの銘柄は「ラーク」ではなかったか。また、ライターはといえば、緑色で¥100系のプラスティック製だった気がする。いつかこれが確認出来るその日を待ちたいものだ。