NHK「あの人に会いたい」−4

初めてRCサクセションを知ったのは、少6。裏に住む2つ上のお兄さんが清志郎さんが好きで「トランジスタ・ラジオ」を聴かせてくれた。いま大人である僕がこの時の感想を代弁すると「楽曲は良かったが、声と歌い方が受け入れられない。なんか怖い。反社会的な、悪い大人な感じ。危険そうで近寄れない」。中3のとき「スローバラード」をNHK・FMのライブ録音放送で聴いた。もうこの頃は洋楽かぶれ開始時期に当たり「素顔のままで」「マイ・ライフ」「オネスティ」「ガラスのニューヨーク」「プレッシャー」のビリー・ジョエルばかり聴いていた。毎週欠かさず見ていた「ザ・ベストテン」にも突如として目もくれず、邦楽を洋楽より一段格下にみて、音楽的には劣っていると決め付けていた。そんなおバカさを発揮し出していたのではあるが、ある日、試しに不意にこの曲を聴いてみたことがあった。聴き終えると、今までこういう曲や詩は接したことがないと思ったのを覚えている。楽曲が良くオリジナリティを感じた。「バラードとはこういうもの」と教えてもらったような気がした。しかし不思議なもので、これ一回っきりでこの曲は通り過ぎることになる。何度でも繰り返し聴きたいという衝動に駆られなかった。今に至るまで、テレビで一回、不意に数十秒間流れて来てこのナンバーを耳にした以外、聴いていない。