LP「RUSH/SIGNALS」(続)-8

今は無きこのビデオ店を通り過ぎ、平坦な道路から上り坂が始まる地点へ到達。左側に「すき家」がある。3つ目の用事、ここで腹ごしらえ。まぁまぁ満腹になる。レジを済ませ、最後4つ目の用事「将棋クラブへ行く」を残すのみとなる。とその前に、フッと思い出す。この近所に古道具屋がある。池尻生活13年もの間、三軒茶屋将棋クラブへ向かうとき使っていたルートに佇んでおり、知っていた。AV機器は充実しておらず陶器関係が売りで俺には御用達ではなかったが「あの古道具屋はまだ存在しているか?」と確認したくなる。方向は三茶と反対だが目指す。こっちは何年振りだろう、やっぱり4年ぶりぐらいか。あっ、あった。ここは中々なくならなさそう。高校生時分、故ロニー・ジェイムス・ディオが雑誌「BUURN !」で「僕は古道具屋へ入るのが好き。どんな物があるんだろう?と、とてもわくわくするんだ」と話していたのを覚えているが、確かに古道具屋の中は、突如として異空間と化す場だ。日常生活空間にはない独特な雰囲気である。何かマジックに掛けられ陶酔感を覚えることすらある。想像力でもってファンタジーを追い求めるロニーさんだからこそ、その作家活動において、古道具屋内で触発されたインスピレーションと云ったものを作品にまで仕立てたぐらいのことは有り得そう。俺の場合、古道具屋を見付けたら、まず、ヤマハかB&Wのスピーカー、一字彫りの将棋の駒、フクロウの置物があるかどうか調べる。古道具たちを眺めて楽しむのはそのあと。ここも以前と全く変わりなかった。そういえば、この店の斜向かいにもう一つ古道具屋があった。ここはしばらくして無くなったのを見届けたが、強い思い出がある。三茶の将棋クラブへ行く時だったから土日だろう。自転車で通り掛かると、店前歩道の台の上に、いつものようにレコードが陳列してあったのだが、この日は、一番前にいきなり「Jeff Beck/Wired」が「でぇーん」と構えていた。俺の中で「これぞ、ロック!」と思うアルバムでロックの基準値になる。こういうゴキゲンなサウンドこそが「ロック」足り得るものだと教えてくれた、感謝の念に堪えないレコードなのだ。当然家に持っている訳だが、手に取り確かめたくなった。レコードがオリジナルかどうか知りたいためだ。この頃からオリジナルを意識し出した。調べるために自転車を止める。ジャケの裏を見る。下の方に「made in england」の印字。ジャケからレコードを取り出し、ラベルにもやはり同印字がある。オリジナルだ。「一枚¥500」の札。この値なら安いと判断。店の姉ちゃんは「¥515です」と言う。ん〜、消費税取るなんてセコイが許してやり買ったのだった。この買いはほんとに大正解だった。神か何かが、俺に与えてくれたのだとただただ思って夢見心地があとあと続いたなぁ。本当に好きだからなんだろうねぇ。買った嬉しい気持ちはいまだに失われてないぜ。いまも部屋に飾っている。目にすれば今だってその気分に浸れる。イギリス本国で出ている「レア・レコード・プライス・ガイド・2000年版」では、これは掲載無し。ありゃ、本国では安いんだな、これ。でも良い。ラベルはイエローだから1stプレスで正真正銘のオリジナル。これは'76年の作品。発売年のモノに針を落として聴くのが良いんだよ。今度、もう片方の国内盤と聴き比べしよう。横に逸れちまった。さぁ、将棋クラブへ。とその前に、また思い付いた。中古レコード屋へ行こう。折角こっち方面に来たのだ、少し見て行こう。