徹子の部屋―3

黒柳さんの悲しい声色や涙が流れている場面はこれまでTVで何度も見てきた。僕がそれを初めて見たのは20歳代前半頃だ。この頃の僕は、なぜ泣くのかの奥にある理由を知る由もなかった。また理解出来る道理も備わっていなかったと言える。30歳代の頃か、再び黒柳さんの泣く姿を目撃した。泣きながらも話しを続ける困難さを物ともせず、やがて平静さを取り戻して次の話題に移る。「泣いていたのに、すぐ立ち直るなんて..。凄いなぁ」とその応対所作に言葉を失った瞬間があった。と同時に、こういう人は強い人である、と本能的に知った気がする。そういえば、黒柳さんは「鉄人」と呼ばれたりしなかったか。しかし当時の僕は、黒柳さんが悲しみで泣きながらもなぜ瞬時に気持ちの切り替えが成せたのか、又そもそも黒柳さんが悲しむその奥の奥にある心情を察するまでの理解へは及べなかった。