生の古今亭菊之丞(ここんてい・きくのじょう)さんを見たー4

桟敷席前に到着。見るとそのスペースの狭さに目が点になってしまった。「足の踏み場がねえ」。靴をこの場で脱ぐのかどうかわからず思わず尋ねた。そうだと言うので脱いでその段差に片方の足を掛ける。すると座に付いている人が、入り進みやすいように自ら足を動かし、そのスペースを作ってくれた。僕は申し訳ないのと有り難さで「すみません」と小声とともに会釈を一人目、二人目と続け、前へ進む。二人目には目を見て行った。舞台上で展開される話しが愉しいのか表情はおだやか、目と目が合った。笑みの表情に救われた気がした。相手の目を見て良かった、と思った。桟敷席とは、左右両端に設けられた座布団席のことだ。僕の席はR(右という意味)席2列目10番。これは一番前から10番目の位置である。随分と前に来たものだ。演者との距離は近い。生の迫力を感じ、おいしい。さっき場内に入り前方の舞台上の菊之丞が目に飛び込んできたが、改めて桟敷席で舞台上の菊之丞を近くで見、ちょっと間を置いて「あー、とうとう、生の菊之条さんを見た」とその成就を果たした感慨に浸った。「生で見てみたいな」と胸中に沸き起こってから1年ほど経ったであろうか。しかし考えてみると、割に早い実現だった印象が強い。