工藤ちゃん階段

この階段は、松田優作がシモキタ某の階段でタバコを吸いながら立っている姿を撮影で使った階段。たしか10数年前にテレビ再放送の〝探偵物語 〝で映し出されたのを見て「おっ、ここはあの階段だ」と思った事を記憶している。今だにシモキタのことは詳しくなく当時はもっと位置関係なぞズボラだったが、この階段のことはすぐにわかった。〝探偵物語〝の舞台は渋谷区の桜ヶ丘や円山あたりが多かった気がするが、このシーンだけはシモキタ、いきなり渋谷ではない雰囲気に察しが付く。2005年11月に世田谷区池尻より現住所に居を構えてから当時渋谷区の勤務先へ自転車で通勤する際この階段を使った。この階段の手前まで来ると自転車を降り抱えて下って行く。帰宅時も結構使った。抱えて上って行くわけである。約半年間それは続き会社の退職とともに終わった。この時も当然〝松田優作の階段〝という認識のもと階段の降り昇りをしていたわけだ。「10年前見た松田優作探偵物語で使われた階段を俺はほぼ毎日使っている」てな具合で、さらに、この事実はほとんど知られていない事を考えると益々不思議な感情が沸いて来るのだった。今は全く使わないかというとそうではない。使っている。小田急線の踏み切り待ちを回避すべく重い自転車を抱えねばならない難点に目をつむりつつこの階段を目指すわけだ。さぁこの階段、どこかというと西口と南口の最短ルートの階段ちゃんだ。小田急線の上を通過、井の頭線がマジカに迫って来るあの幅の狭ーい通路と言えば察しは付くであろう。この工藤ちゃん階段、そう遠くない将来、無くなって消える。いま地上を走る小田急線は地下に潜ることになっていて工事中であるが完成は2013年の予定だそうだ。地下化した暁にはこの小規模な歩道橋階段の存在が問われ必要性はゼロとの結論に至りやがて取っ払われるとの見方は甚だの検討違いには当たらないはず。ちと勉強不足で断言出来ず調べるが、この工事はなぜか税金が投入されているゆえ、この階段についてもどう扱うかは何かしら都民区民の意見が反映されて然るべき対象であるという法律・条令の範囲に引っ掛かってくるはずだ。行政とこの電鉄会社にだけ決定権が委ねられているとはどこの法律・条令にも明記されていないと推測に及ぶのだがどうだろう。こういうものは記念物として残して後世に伝えたい。私がテレビで初めて松田優作を見たのはドラマ「太陽にほえろ!」である。ジーパン刑事は好きだった。背が高くて男らしく顔や姿がかっこよかったのだ。ドラマではよく走っていたが、小学生時分走るときはジーパン刑事になり切って恰好つけたことを覚えている。水谷豊がゲスト出演した回では、松田優作靴屋でなにやらお粗末な失態を演じるシーンがあるのだが、そういうお茶目というかちょいふざける松田優作も好きだった。時を経て、20代30代40代となった今も新鮮な存在感として記憶にある役者さんだ。こうして考えてみると、このひとは子供から大人まで幅広い支持を受ける器の持ち主だったんだなぁと実感する。優作さんの39歳の死は早すぎる。訃報を知ったのは夜中にテレビ「11PM」を見ているとき、あの高田淳次さんがまじめな顔で文面を手に持ち読み上げた「いま入って来た情報です。松田優作さんが膀胱がんでお亡くなりになられました」である。