NHKスペシャル「山が崩れる 日本列島を襲う豪雨と地震」―3

こういう光景を目にして「ああ、この明るさで十分。ずうっとこのままで良いじゃないか」と今までの夜は必要以上の明るさだったことを改めて認識した。震災以前でも何か眩しいと思っていたのだ。半分となったあの明るさは良い雰囲気だった。みんなの気持ちはこのとき一つになったと思う。贅沢しなくても大丈夫だとか、無駄使いを止めようという意識かどうかわからないが、いつエネルギーが切れるかわからないからなるべく必要最低限で使おうという共通認識が働いていたはずだ。自動販売機も電源は切られていた。僕は自動販売機が嫌いだ。無くなればよいと思っていたから嬉しかった。これからまもなく都知事選があった。石原氏が当選した。その日曜日の都知事選挙日の夜9時前後、石原氏が大勢時集まる支持者の前に姿を現すテレビ中継があった。マイクを持つと「もうトシで疲れて知事をやるつもりはなかったが『もう一回やれ』という声が止まなかった。また、東日本大震災があった。あの大災害を見て、このままじゃ日本は今の官僚に任せていたらダメだと思った。だからやることにした。当選できてよかった。東京は東北のために手助けしますよ、自動販売機やらパチンコの電気は止めよう。なくたっていいじゃないか、そうでしょ、ねぇ、みなさん」と声高に言った。この点は僕は胸がスカッとした。テレビの中の聴衆からは拍手とともに「おおー」と大勢の同感を示す声が聞かれた。いや、聴衆もノリで反応した感も無くはない。少なくとも「あなたのその意見について行く」的な空気は充満していた。